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コラム

所有権の移転時期はどうすればよい?所有権留保条項とは

売買契約書では、対象物の所有権の移転時期を定めることがある。

その時期としては、引き渡し時点とすることが通常だが、代金支払い時とすることもある。その場合の効果について説明する。

1.何も定めがない場合の所有権の移転時期

売買契約においては、代替できない物(特定物)であれば、契約時に所有権が移転するが、代替できる物(不特定物)は、納品時に特定して所有権が移転するのが原則だ。

請負契約であれば、発注者が材料の主要部分を供給しない限りは、納品時に所有権移転する。

このように、契約の性質に応じて、所有権の移転時期は変わってくる。

契約書において、所有権の移転時期を引き渡し時点と合意することは、所有権の移転時期を分かりやすくするというメリットがある。

2.所有権の移転時期を代金支払い時とする意味

所有権の移転時期について、代金支払い時と契約書に定めることがある。これは、商品を販売する側が、販売先からまだ代金を回収をしていないのに、販売先が倒産してしまった場合に備えて入れることがある条項だ。

通常の取引であれば、代金は後払いとなるので、販売する側は納品をした後、売掛金を回収する必要がある。売主が商品を売っても、所有権は売主の元にとどまるという特約があれば、相手に何かあっても所有権という強い権利を確保しておくことできる。

3.所有権留保条項の有効性

所有権留保条項は、相手が破産した場合であっても、有効だ。一般に、破産となった場合、担保物には対抗要件が必要とされている。しかし、売主であれば対抗関係にないため、所有権留保条項が優先されることになる。

但し、無条件の返還請求権ではなく、担保権として清算される、すなわち商品の時価評価額での清算になる点に注意が必要だ。

4.所有権留保の注意点

このように、所有権留保条項は一定の効果があるが、確実な回収を約束するほどのものではない。商品が相手の倉庫にあればよいが、事情を知らない第三者に転売され、その第三者について事情を知るべきであったという過失がない場合、所有権を失ってしまう。

商品を販売した相手が、転売した第三者に対して有する売買代金債権を優先的に(物上代位して)差し押さえることも可能だが、実際に商品を販売した相手が、転売した第三者から代金の支払いを受けたら、担保権としての効力を失ってしまう。

また、使いどころとしても、うまくいかないときもある。もともと商品が第三者に販売され、商品は自社から第三者に直送する商品の場合には、当該第三者が所有権を取得するのを防止する必要がある。そのため、当該第三者まで含めて所有権留保について合意する必要があるが、現実は困難な場合が多いと思われる。

そのほか、注意すべき点としては、所有権が留保されていると、所有者としての責任(不法投棄された場合の責任等)を負うことがあることも認識しておきたい。

5.まとめ

所有権留保は、商品が相手の倉庫に存在していれば、一定の効果があるが、完全な担保として評価できるものではない。したがって、所有権留保によらなくても回収できるように、与信管理を十分に行っていく必要がある。

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